税務ニュース

株式譲渡損失繰越控除と配偶者控除、扶養控除との関係について考えてみましょう。

[相談]
私は専業主婦で、税務上は夫の扶養になっています。平成16年は
株式譲渡損失が100万円発生しましたので、損失を翌年以降に繰り越すためにあえて確定申告しました。
平成17年は株式譲渡益が80万円発生しましたが、前年の100万円の損失と通算できるので、確定申告すれば税金はかからないと言われました。もちろん確定申告するつもりですが、何か気をつけることはありますか。
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[回答]
・前年以前の繰越損失が無いケース(所得控除は基礎控除のみ)
A 一般口座か源泉徴収無しの特定口座

源泉徴収有りの特定口座でもあえて確定申告する
所得税 株式譲渡益80万円-基礎控除38万円=42万円
42万円×7%=29,400円
29,400円-(29,400円×20%)(17年の定率減税)
=23,500円

住民税 株式譲渡益80万円-基礎控除33万円=47万円

47万円×3%=14,100円

14,100円-(14,100円×15%)(17年の定率減税)

=11,900円

所得税+住民税=35,400円

B 源泉徴収有りの特定口座で確定申告しない

所得税 株式譲渡益80万円×7%

=56,000円

住民税 株式譲渡益80万円×3%

=24,000円

所得税+住民税=80,000円

Aの方がBより44,600円税金が少なくてすむ

専業主婦などで他に所得が無かったり、公的年金所得控除額以下の国民年金だけの年金生活者であったり、他に所得があり課税されているが定率減税の枠が残っている方は、源泉徴収有りの特定口座で確定申告しないで済ますより、自分の税金だけ考えると確定申告した方が税金は少なくて済みます。

しかし、専業主婦で夫の控除対象配偶者であった場合には、38万円超の株式譲渡益を申告すると、配偶者控除の対象から外れてしまいます。(38万円超70万円未満なら配偶者特別控除が受けられます)

また、自営業者や年金生活者等は所得として申告すると、国民健康保険料や介護保険料の負担に跳ね返ってくる場合があります。

・前年以前の繰越損失が有るケース(所得控除は基礎控除のみ)

A 確定申告して繰越損失を使う

株式譲渡益80万円-繰越損失100万円=課税所得0

所得税も住民税もかからない

B 源泉徴収有りの特定口座で確定申告しない

=繰越損失があってもあえて使わない

所得税 株式譲渡益80万円×7%

=56,000円

住民税 株式譲渡益80万円×3%

=24,000円

所得税+住民税=80,000円

Aの方がBより80,000円税金が少なくてすむ

ご相談者のケースでは、ご自分の税金だけを考えると、圧倒的に確定申告した方が有利です。しかし、税金がかからないのなら夫の控除対象配偶者になるかといえば、残念ながらこのケースではなりません。

「所得税の扶養控除の対象となる扶養親族に該当するかどうかなどを判定する際の「合計所得金額」は、この繰越控除の適用前の金額となります。」

(国税庁HP 平成17年分株式等の譲渡所得等の申告のしかた(記載例)より)

ご相談者が「一般口座」か「源泉徴収無しの特定口座」なら確定申告しないわけにはいきませんが、「源泉徴収有りの特定口座」ならば繰越損失が有ろうが無かろうが、申告によるご自分の税金の還付金額と、夫の税金の増加金額、社会保険の扶養の範囲から外れないかどうか、夫が会社員なら家族手当等への影響等を充分に比較検討してから、確定申告するかどうかを決めてください。

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