今回の大綱の中で「同族会社役員報酬の一部損金不算入制度」が新設されました。「個人事業者が会社を作って節税」という定番の節税法が否定されます。
税制改正大綱最大のサプライズ~「会社作って節税」を規制へ
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1.税制改正大綱最大のサプライズ
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平成17年12月15日に、連立与党の平成18年度税制改正大綱(大綱)
が発表されました。
今回の大綱の中で最大のサプライズが「同族会社役員報酬の一部
損金不算入制度」の新設です。
この制度の新設により、「個人事業者が会社を作って節税」とい
う定番の節税法が否定されることになり、多くの中小企業にとって、
増税となります。
そこで今回は、「同族会社役員報酬の一部損金不算入制度」につ
いて、ポイントを説明します。
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2.会社を作るとなぜ節税になるのか
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個人事業者が会社を作って節税しようとするのは、「給与所得控
除分の節税効果」を狙うからです。
社長の役員報酬は、社長の給与所得として所得税と住民税がかか
ります。ただし、給与収入に対して直接課税されず、「給与所得控
除」というみなし経費を差引後の金額に対して課税されます。この
「給与所得控除」が使える分、会社設立して役員報酬を受ける方が、
個人事業よりも税負担を軽減できます。
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3.同族会社役員報酬の一部損金不算入制度
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(1)対象となる法人
同族会社のうち、業務を主宰する役員及びその同族関係者等が発
行済株式の総数の90%以上の数の株式を有し、かつ、常務に従事す
る役員の過半数を占める場合等に該当するものが対象となります。
(2)損金不算入とされる役員報酬
(1)の同族会社が、その業務を主宰する役員に対して支給する
給与のうち、給与所得控除相当額は、損金不算入となります。つま
り、この制度の新設により、2.で説明した、給与所得控除の活用
による節税策が封じ込められることになります。
(3)損金不算入とされない場合
次の(1)または(2)に該当する場合には、(2)の損金不算入の規定
は適用されません。
(1) 同族会社の所得等の金額(所得の金額と所得の金額の計算上損
金の額に算入された当該給与の額の合計額をいう。以下同じ)
の直前3年以内に開始する事業年度における平均額が年800万
円以下である場合
(2) (1)の同族会社の所得等の3年間の平均額が年800万円超3,000万
円以下であり、かつ、当該平均額に占める当該給与の額の割合
が50%以下である場合。
(4)適用時期
平成18年4月1日以降に開始の事業年度から適用予定です。(財務
省「平成18年度税制改正の大綱」)
(5)不明点
この制度につき大綱では不明確な事項があります。
例えば、(3)(1)と(2)の所得等の金額について、計算方法等の
詳細が不明確です。特に同族会社に青色繰越欠損金がある場合、所
得金額には欠損金控除前か後かということが不明です。さらに、こ
の制度における「役員」に、法人税法上の「みなし役員」が含まれ
るのかどうかも分かりません。これら不明点の取扱いは、今後公表
される法令等で内容を確認することが必要です。
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4.対応策
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「同族会社役員報酬の一部損金不算入制度」への対応策として、
まず考えられるのは、次の2点です。
(1)発行済株式総数の10%超を非同族の株主が保有
同族会社の発行済株式総数の10%超を非道族の株主が保有すれば、
「業務を主宰する役員及びその同族関係者等が発行済株式の総数の
90%以上の数の株式を保有」しないので、この制度の適用外となり
ます。
ただし、中小企業の場合、同族以外の株主の出現に抵抗感が強い
ので、実行は容易でないと思います。
(2)同族の従業員へ給与を増額支給
この制度の対象となるのは「業務を主宰する役員に対して支給す
る給与」です。このため、役員報酬で損金不算入となる分を、同族
の従業員に対して給料を増額支給して調整する手法が考えられます。
ただし、業務実態のない親族への給与は税務当局に否認されるお
それが大ですし、事実上経営陣として働いている親族であれば「み
なし役員」とされるかもしれません。いずれにせよ、これらの対応
策の検討については、今後公表される法令等の内容を確認のうえ、
慎重に行うことが求められます。